13万円を払わない人は、本当に得をしたのか?その身勝手な行動が、施工会社と職人の時間を奪っている
「リフォーム業者は信用できない」
そんな言葉を耳にすることがあります。
確かに、施工会社を慎重に選ぶことは大切です。工事内容や見積金額、施工品質を確認するのは当然でしょう。
しかし、私は逆のことを考えることがあります。
施工会社は、お客様を無条件に信用しなければならないのでしょうか。
工事を完了したのに、約束した代金を支払わない。
何日も商品について相談し、発注した後に突然キャンセルする。
保険金が下りたら工事を依頼すると約束しておきながら、保険金の支払いが決まると連絡が取れなくなる。
実際に、私たちはこうした経験をしています。
そして、こうした出来事には、共通する問題があります。
お客様が目先のお金や自分の都合を優先した結果、その負担を施工会社が引き受けているということです。
しかも、負担するのはお金だけではありません。
経営者や社員、職人の時間まで奪われているのです。
今、社会では労働時間の短縮や賃上げが求められています。
それなのに、なぜ施工会社は、こうした無駄な仕事を増やされ続けなければならないのでしょうか。
「よくやってくれた、次も頼むよ」と言っていたお客様
以前、当社が工事を行ったお客様から、換気扇の故障について相談を受けたことがあります。
そのお客様とは、今回が初めての取引ではありません。
過去の工事では、
「よくやってくれた」
「安心できた」
「次も頼むよ」
と評価していただいていました。
今回の賃貸住宅の換気扇工事でも、入居者に対して当社を安心できる施工会社として紹介していました。
しかし、私は、褒められたからといって、それだけで相手を信用するわけではありません。
将来の仕事を約束されたからといって、その言葉を当てにして仕事をするわけでもありません。
なぜなら、信用とは、口で何を言ったかではなく、実際に何をしたかによって判断するものだからです。
実は、このお客様との過去の取引でも、工事代金から最後に10万円を差し引かれた経緯がありました。
私は、そのことを覚えていました。
ところが、今回の工事を依頼する際、お客様はこうおっしゃいました。
「前の工事のときも、きちんと支払ったので」
私は、この言葉に違和感がありました。
少なくとも、当社の認識では、最後に10万円を差し引かれたという経緯があったからです。
そして、今回も支払いの問題が起きることになります。
5年前に交換した換気扇に鳥が巣を作った。それも施工会社の責任ですか?
以前の換気扇工事から約5年が経過した後、鳥が巣を作ったことによって換気扇が故障したという相談を受けました。
ところが、お客様は、以前当社が施工したことを理由に、無料で工事をするよう求めてきました。
しかし、5年前に工事をしたというだけで、その後に発生した故障のすべてが施工会社の責任になるわけではありません。
施工の不具合なのか、その後に生じた別の原因による故障なのかは、区別して判断する必要があります。
当社としては、無料で工事を行うことはできませんでした。
その後、通常の金額から3割引きとし、13万円で工事を行うことになりました。
この値引きは、将来の仕事を期待したものではありません。
お客様が「また仕事を頼む」と言ったから安くしたわけでもありません。
今回の工事について、13万円という金額で合意したのです。
そして、工事を完了しました。
ところが、その13万円が現在も支払われていません。
工事を依頼し、金額を決め、施工を完了させておきながら、代金を支払わない。
それで取引が成立すると思っているのでしょうか。
13万円を払わずに、また仕事を頼めると思っているのでしょうか?
そのお客様は、工事の際にも「また、いろいろ仕事があるから、お宅にお願いします」とおっしゃっていました。
しかし、私はその言葉を信用していたわけではありません。
むしろ、これまでの取引を見て慎重に判断していました。
そして、今回の13万円は未払いのままです。
ここで一つ疑問があります。
約束した13万円を支払わない人が、なぜ次も同じ施工会社に仕事を頼めると思うのでしょうか。
それとも、次の仕事を依頼できなくなっても、今のお金を支払わない方が得だと考えているのでしょうか。
本人の考えは分かりません。
しかし、私は、約束した工事代金を支払わない方を信用することはできません。
工事には材料費も職人の施工費も必要です。
代金を支払っていただけなければ、その負担は施工会社に残ります。
同じ相手から再び依頼を受けたとき、同じリスクを負ってまで仕事を引き受ける理由があるでしょうか。
施工会社はいくらでもあると思っているのかもしれません。
しかし、一社に断られたら別の会社に頼めばよいという考えで同じ行動を繰り返していれば、依頼できる相手は減っていきます。
それ以上に、本人が失っているのは信用そのものです。
3日間エアコンの相談をして、発注後にキャンセル。その負担は誰のものですか?
別のお客様から、エアコンの交換について相談を受けたこともあります。
「このエアコンには、どんな機能がありますか?」
「こちらの機種とは、どのような違いがありますか?」
そうした質問に対応し、メールで3日間やり取りしました。
機種ごとの特徴を説明し、希望条件を確認しながら、最終的に設置するエアコンを決めました。
当社では、その決定を受けて商品を発注しました。
そして、商品が入荷しました。
ところが、工事を行おうとした段階で、突然話が変わりました。
お客様は、工事は依頼したがエアコン本体は注文していないという趣旨の説明をし、本体をキャンセルすると言い出したのです。
私たちは3日間も機種について相談を受け、商品を決め、発注まで進めていました。
そのうえで、入荷後にキャンセルです。
仕方なく商品を返品し、キャンセルに伴う費用も当社で負担しました。
そして、その翌日。
お客様から再びメールが届きました。
「ごめんなさい。私が悪かったです。工事をしてください」
私は、そのメールに返信しませんでした。
なぜか。
謝罪をすれば、それまで相手に生じさせた負担が消え、再び仕事を引き受けてもらえると考えているのでしょうか。
一度発注した商品をキャンセルし、施工会社に返品の手間と費用を負担させた。
その翌日には、再び工事を依頼する。
私には、そのような取引を続ける理由がありませんでした。
もちろん、キャンセルした事情までは分かりません。
しかし、その理由が何であれ、すでに発生した仕事や費用が消えるわけではありません。
保険金が下りると工事を依頼しない。その見積書を作ったのは誰でしょうか?
住宅の水漏れ被害についても、同じような問題があります。
「床が濡れたので、全部張り替えたい」
「床暖房も水に濡れたので交換したい」
「キッチンやドアも交換する見積もりをお願いします」
そうした相談を受ければ、私たちは現地を調査します。
被害状況を確認し、必要な修繕内容を検討する。
材料や施工費を調べ、見積書を作成する。
保険会社に提出する工事関係資料を準備し、修繕内容についての問い合わせにも対応する。
私たちは実際に、こうした業務を一通り行った経験があります。
そして、お客様からは、
「保険金が下りたら工事をお願いします」
というお話がありました。
ところが、保険金の支払いが決まった後、連絡が取れなくなりました。
保険金が支払われたからといって、傷んだ床や床暖房が自然に直るわけではありません。
もちろん、工事を見送る事情が生じる場合はあるでしょう。
保険金が支払われたことだけで、当初の見積もりどおりの工事が義務になるわけでもありません。
しかし、工事を依頼するという話を前提に調査や資料作成を依頼していたのであれば、その後の判断についても説明していただきたいと思います。
保険金を受け取るまで施工会社に仕事を依頼しておきながら、支払いが決まると連絡を絶つ。
それでは、施工会社が次の依頼を信用して引き受けることは難しくなります。
労働時間を短縮しろ、賃金を上げろ。その一方で無駄な仕事を増やすのですか?
ここからが、私が特に問題だと考えていることです。
現在、社会では労働時間の短縮や賃上げが求められています。
長時間労働を減らすこと。
休日を確保すること。
働く人の待遇を改善すること。
どれも大切なことです。
私も、職人や社員が無駄な残業をせず、適切な対価を得られる環境が望ましいと考えています。
しかし、施工会社の現実も見ていただきたいのです。
3日間相談した商品を、入荷後にキャンセルされる。
返品の手続きを行い、費用まで負担する。
保険申請のために現地調査や見積書を作成しても、工事の依頼につながらず、連絡さえ取れなくなる。
工事を完成させても、代金を支払ってもらえない。
こうしたことが起きるたびに、本来必要のなかった仕事が発生します。
返品手続き。
仕入先との調整。
予定の組み直し。
未払い代金の確認や請求。
連絡が取れないお客様への対応。
これらにも人の時間が必要です。
では、その時間はどこから生まれてくるのでしょうか。
予定していた仕事を後回しにするのか。
別の日に回すのか。
それとも、通常の業務が終わった後に対応するのか。
実際には、本来必要のなかった対応を吸収するために、残業や休日の仕事が増えることもあります。
労働時間を短縮し、賃金も上げる。
そのためには、生産性を高めなければなりません。
ところが、こうした無駄な負担が増え続ければ、生産性の向上どころではありません。
時間を短くしろと言いながら、相手の時間を無駄に使わせる。その矛盾を考えたことがあるのでしょうか。
無駄な仕事の費用は、最終的にどこへ行くのでしょうか?
施工会社は、商品を仕入れ、職人に施工費を支払い、事務所や車両を維持しながら経営しています。
そのうえで、社員の賃金を上げ、休日を確保し、適切な労働環境を整えていく必要があります。
しかし、工事とは直接関係のない無駄な業務が増えれば、その分の費用も発生します。
返品対応も、未払い代金の回収も、連絡の取れないお客様への対応も、誰かが行わなければなりません。
その費用を、いつまでも施工会社だけが負担できるでしょうか。
利益を削って吸収するには限界があります。
経営者や社員の労働時間を増やして吸収するにも限界があります。
結局、そうした負担が常態化すれば、施工価格への反映や、対応できる業務の見直しが必要になります。
つまり、一部の人が相手の仕事を軽く扱うことで生じた負担が、最終的には、きちんと約束を守って工事を依頼するお客様にも影響する可能性があるのです。
それは、公平なことでしょうか。
約束を守り、適正な代金を支払うお客様が、約束を守らない人によって生じた負担まで間接的に負う。
そのような状態を、当たり前にしてよいのでしょうか。
そんな行動が当たり前になれば、施工会社は続けられません
一人のお客様が13万円を支払わなかったことで、直接施工会社が廃業するという話ではありません。
私が問題にしているのは、そのような行動が社会全体に広がることです。
約束した工事代金を支払わない。
発注した商品を一方的にキャンセルし、その負担を施工会社に押し付ける。
工事の依頼を前提に見積書を作成させ、後から連絡を絶つ。
こうした行動が増え、それを当然だと考える人が多くなれば、施工会社はどうなるでしょうか。
無駄な仕事が増えます。
回収できない費用が増えます。
本来の施工業務に使える時間が減ります。
一方で、賃金を上げ、労働時間を短縮し、休日を確保することも求められます。
その両方を実現するには、経営が成り立たなければなりません。
しかし、負担ばかりが増え、適正な対価を得られない状態が広がれば、事業を続けることが難しくなる会社も出てくるでしょう。
仕事を辞める人もいるでしょう。
廃業を選ばざるを得ない会社も出てくるかもしれません。
これは、一人の行動が直接会社を潰すという話ではありません。
相手の仕事を軽く扱う行動が社会の中で当たり前になることで、施工業界そのものが成り立ちにくくなるという問題です。
では、施工会社が減ったとき、困るのは誰でしょうか。
水漏れが起きたとき。
エアコンが故障したとき。
給湯器が壊れたとき。
住宅の修繕を頼める会社が少なくなれば、困るのは住宅を所有している人たちです。
施工会社は、必要になったときに自然に現れるわけではありません。
仕事を続けられる環境があって、初めて存在できるのです。
「ほかの業者に頼めばいい」と考える人が見落としていること
施工会社はいくらでもある。
この会社が仕事をしなくても、別の会社に頼めばいい。
仮にそう考えているのだとしたら、見落としていることがあります。
施工会社にも、依頼を引き受けるかどうかを判断する必要があります。
工事代金を支払わなかった相手から、再び依頼を受ける。
商品発注後に突然キャンセルし、返品費用まで負担させられた相手から、翌日にもう一度工事を依頼される。
そんなとき、何もなかったように仕事を引き受けなければならないのでしょうか。
私は、そうは考えていません。
仕事を提供する側にも、自分たちの時間と経営を守る必要があります。
一社から断られれば、別の会社を探す。
そこで同じことを繰り返せば、さらに別の会社を探す。
そうしていけば、本人が依頼できる相手は少しずつ減っていきます。
しかし、もっと大きな問題があります。
その人は、施工会社を一社失っているだけではありません。自分自身の信用を失っているのです。
信用は「次も頼む」と言えば得られるものではありません
信用は、相手を褒めれば得られるものではありません。
「よくやってくれた」と言えば生まれるものでもありません。
「次も仕事を頼む」と言えば、相手が何でも引き受けてくれるわけでもありません。
まして、「ごめんなさい」と謝れば、それまでに生じさせた負担がすべて消えるわけではありません。
信用は、実際の行動によって築かれるものです。
約束した代金を支払う。
発注した内容に責任を持つ。
事情が変わったら説明する。
相手が行った仕事や負担を正当に扱う。
そうしたことの積み重ねが信用になります。
換気扇工事のお客様は、以前の当社の仕事を評価していました。
賃貸住宅の入居者にも、安心できる施工会社として紹介していました。
しかし、今回の13万円は現在も支払われていません。
エアコンのお客様は、キャンセルの翌日に謝罪し、再び工事を依頼してきました。
しかし、私は、その仕事を引き受けたいとは思いませんでした。
私が見ているのは、相手がどれだけ立派な言葉を使うかではありません。
実際に、相手がどう行動したかです。
だからこそ、口約束だけでは仕事を進められなくなります
保険申請に関する調査や見積書の作成についても、これまでは「保険金が下りたら工事をお願いします」という言葉を前提に対応することがありました。
しかし、その後に約束が守られず、連絡も取れなくなることがある以上、口約束だけで仕事を進めることはできません。
当社としては、今後、保険金請求に使用する修繕見積書の作成や現地調査について、正式な契約書を取り交わし、業務内容や費用の条件を明確にする必要があると考えています。
これは、すべてのお客様を最初から疑うためではありません。
お互いの役割と責任を明らかにし、一方だけが不利益を負う状況を避けるためです。
そして、こうした仕組みが必要になる背景には、約束だけでは安心して仕事を進められなくなっている現実があります。
最後に|目先のお金を守って、何を失っているのでしょうか?
13万円を支払わない。
発注したエアコンをキャンセルし、その費用を施工会社に負担させる。
保険金が下りるまで見積書や資料を作成させ、工事を依頼するという話があったにもかかわらず、連絡を絶つ。
こうした行動によって、一時的にお金を手元に残せることはあるかもしれません。
しかし、その代わりに相手の信用を失います。
そして、こうした行動をする人が増えれば、施工会社全体に無駄な仕事と費用が積み重なっていきます。
労働時間を短縮し、賃金を上げ、働く環境を改善しようとしている社会で、なぜ施工会社だけが、お客様の一方的な都合によって生じる負担を、際限なく吸収しなければならないのでしょうか。
施工会社が無駄な残業や休日出勤によって対応し続けることにも限界があります。
適正な対価を得られなければ、仕事を続けることも難しくなります。
そして、住宅を修繕する仕事を担う会社や人が減れば、最終的に困るのは社会全体です。
ただし、私が最も重要だと考えているのは、それだけではありません。
目先のお金を優先することで、自分自身の信用を失っていることです。
お金は、支払わなければ一時的に手元に残るかもしれません。
しかし、失った信用は、後からお金を出せば必ず買い戻せるものではありません。
施工会社に信用を求めるのであれば、お客様自身も信用される行動を取る必要があります。
私たちは、お客様のお金と引き換えに、技術と仕事を提供しています。
どちらか一方が偉いわけではありません。
互いに約束を守り、適正な対価を支払い、責任を果たす。
それが、対等な取引の基本です。
13万円を支払わずに済んだとして、その代わりに失った信用はいくらで買い戻せるのでしょうか。
私は、相手の仕事と時間を尊重し、約束を守り合えるお客様と、信頼関係を築きながら仕事をしていきたいと考えています。
























